固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間、国が定めた価格で買い取ることを義務付ける制度です。太陽光発電や風力発電、水力発電などの再生可能エネルギー普及のために2012年に国が制定しました。では、なぜそのような制度が創られたのでしょうか。
そもそも固定価格買取制度(FIT)は
なぜ始まったのか?
FITの目的
FIT制度(固定価格買取制度)の目的は、再生可能エネルギーの導入促進と普及拡大です。
より具体的には、以下の3つの目的が挙げられます。
再生可能エネルギーの普及 | 再生可能エネルギーによる発電事業を安定的に行えるようにすることで、普及を促進します。 |
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再生可能エネルギーのコスト低減 | 市場拡大に伴うコスト低減(スケールメリット、習熟効果)を図り、 再生可能エネルギーの中期的な自立を促すことを目的 |
地球温暖化対策 | 二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの利用を増やし、地球温暖化対策に貢献します。 |
FITの仕組み
再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が10年または、20年間一定価格で買い取ることを約束する制度です。そしてその電力会社が買い取る費用の一部をご利用の皆様から賦課金という形で集め、コストの高い再生可能エネルギーの導入を支えているのです。それにより、発電設備の高い建築コストなども回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進みます。
出典:資源エネルギー庁 再生可能エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2024
エネルギー自給率の問題
石油や石炭などの資源に乏しい日本はエネルギー自給率が低く、海外から輸入する石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しています。
また、2011年9月11日に起こった東日本大震災により、当時日本の総電力の3割前後を担っていた原子力発電が停止したことによってエネルギー自給率は大幅に低下してしまっています。
こういった地政学リスクなどによるエネルギー価格の変動や供給不安の影響を受けにくくし、固定価格買取制度(FIT)によって自国内の再生可能エネルギーを安定的に生産することを目指すべく生まれた制度です。
2010年からのエネルギー自給率
出典:IEA「World Energy Balances 2022」の2021年推計値
太陽光発電だけではないFIT制度
多くの方がFIT制度(固定価格買取制度)を太陽光発電と結びつけて考えがちですが、実際にはこの制度はより広範囲の再生可能エネルギーをカバーしています。太陽光発電以外は個人ではほとんど関係ありませんがFIT制度の全体像について解説します。
太陽光発電
住宅用や事業用など、様々な規模の太陽光発電設備がFITの対象となっています。
例:自宅の屋根に太陽光パネルを設置し、余った電気を電力会社に売る。
風力発電
陸上風力、洋上風力を含む、大規模な風力発電設備がFITの対象となっています。
例:風力発電会社が、広大な土地に風車を設置し、発電した電気を電力会社に売る。
地熱発電
温泉地などで地熱を利用した発電設備がFITの対象となっています。
例:温泉旅館が、地熱発電設備を導入し、発電した電気を電力会社に売る。
水力発電
30,000kW未満の小規模な水力発電設備がFITの対象となっています。
例:農業用水路に小水力発電設備を設置し、発電した電気を電力会社に売る。
バイオマス発電
木材や家畜の糞尿などを利用した発電設備がFITの対象となっています。
例:林業会社が、間伐材などを利用したバイオマス発電設備を導入し、発電した電気を電力会社に売る。
注意点
固定価格買取制度(FIT)は、再生可能エネルギーの導入を促進するための制度ですが、固定価格での買い取りには、電気料金の一部として国民負担が生じるという側面もあります。
これは太陽光発電の設置の有無にかかわらず、再エネ賦課金という項目で月々の使用電力量に合わせて徴収されています。
FIT制度によって再生可能エネルギーの導入が進み、地球温暖化対策に貢献できる一方で、電気料金の上昇につながる可能性があることを理解しておく必要があります。
また、FITによって再生可能エネルギーの導入が進むと、電力会社の火力発電の稼働率が下がり、そのコストが電気料金に転嫁される可能性も考えられます。
まとめ
太陽光発電システムの導入や蓄電池の設置を検討する際は、専門家にご相談いただくことをおすすめします。ご自身のライフスタイルや電力使用状況に合わせた最適なシステムを提案してもらい、再生可能エネルギーを賢く活用しましょう。